トルコリラが揺れています。それも過去最高レベルで。
続々と更新していく過去最安値は下げ止まりを知らず、この記事を執筆している時点でトルコリラ円は8.2円まで下落しています(下げ過ぎぃ!)。
私自身、スワップ狙いのトルコリラ円買いポジションをかれこれ5年ほど保有し続けていますが、さすがに今回の下落はダメージが大きく、余裕で3桁万円の含み損を抱えております。泣きそう。
果たして、トルコリラの下落の目途はどこにあるのか。いまトルコに何が起きているのか。
この記事では、トルコリラ円の今後の見通しについて、堅苦しくなく、有識者でなくてもわかるような表現でまとめていきます。
トルコリラ下落の根底にあるもの
そもそも、下落理由の根底にはトルコ中銀の独立性への不信感があります。
現在のトルコのCPI上昇率(インフレ率)は毎月上昇しているため、
インフレ率上昇⇒物価が高い(=通貨の価値が低い。お金じゃぶじゃぶ)⇒政策金利を上げて経済を引き締め
というのが、一般的に有効とされているセオリーな政策となります。
…しかし、トルコ中銀はこの状況下で政策金利の引き下げを遂行。そんな政策、おかしくね?と世界中が思っているところですが、実はその裏にトルコの大統領、エルドアンの影があるというのです。
エルドアン大統領は以前から「金利が下がればインフレ率は下がる」という独自理論を唱えており、これまでも政策金利を引き上げたトルコ中銀総裁を更迭してきました。
そのため、現在のトルコ中銀の政策も「エルドアン大統領にビビっているために金利引き上げできていない」と市場では判断されており、トルコ中銀が打ち出す政策の信用の無さがトルコリラの下押し圧力となっています。
また、金利が下がると、たいてい通貨価値は下がります。利息が少なくなるのでその通貨を保有する価値が下がるからです。
いまのトルコはエルドアン大統領の権力が非常に強く、政治と経済が捻じ曲がってしまっているような形です。本来、トルコという国は歴史もあるし、地理的にも優位にあるし、人口の半分くらいが30台以下という働き盛りの国なんで、国力自体はとても強いはずなのですが。。。
エルバン財務大臣が解任
エルドアン大統領に屈服しがちなトルコ中銀メンバーですが、そこに立ち向かう人もいます。その一人がエルバン財務大臣。
エルバンさんは、エルドアン大統領に方針変更を説得できる最後の1人とされていた人ですが、その人が、、、解任されました(涙)。
ここまで通貨安が続くと、それなりに偉い人が利上げを考えている風な発言をして、通貨の下落を止めるのがありがちなパターンなのですが、そこはさすがのトルコ。エルドアン大統領が「このトルコリラ安は外国からの攻撃のせいだ!さらに利下げすることでトルコリラ安を止めるぞ!」と、驚きの発言を繰り出しました。
これに対して、エルバン財務大臣がなんとかするぞ的な発言をしていたのですが…、期待もむなしく、案の定、解任させられてしまいました。
後任は、ネバティ副財務大臣とのこと。この人は、大統領の利下げに対して「さすがっす!やっぱ利下げしないとトルコリラ安は止まんないっすよね!」みたいなこと言ってた人なので、エルドアン大統領側の人です。。。
残る希望は、カブジュオール総裁のみ。。。
コロナ感染状況がまずい
政治の問題がひどすぎて、トルコのコロナ感染状況の経済への影響はあまり語られることがないのですが、実はトルコ国内でのコロナ感染状況はかなり不味い状況にあります。
コンスタントに毎日2万人を超える感染者が出ており、ここに追い打ちとなるようにオミクロン株が新登場。
コロナ感染状況の悪化は、リスクオフの流れを進めることになりますので、トルコリラの下押し圧力の一つになってます。
ついにトルコ中銀が直接市場に介入
さすがにエルドアン大統領も、ここまでのトルコリラ安は本意ではなかったようで、ついにトルコ中銀が直接市場に介入してきました。
具体的には、中銀が外貨売りトルコリラ買いを行うことで、直接トルコリラを押し上げようとした模様です。
これにより、一時的にトルコリラは上昇。9円台まで回復しましたが、戻りもそこまで。
市場が待っているのはやはり利上げであったようで、多少の介入では流れは止められなかったということでしょう。
しかもその後、エルドアン大統領が「高金利を支持しない」と述べたことで、またトルコリラ安につながりました。介入の意味なし!
とは言え、中銀による介入は一時しのぎに過ぎませんでしたが、「介入しても止まらなかった」という事実は今後の変化のきっかけになるかもしれません。
トルコリラが上昇するためにはやっぱり金利上げないとダメなんだねっていうことが広く強く伝わることで、政策金利上昇の芽が出てくるかも。過去にも、為替介入でトルコリラは下げ止まらず、結局緊急利上げした経緯もありますし、それと同じ流れになってくれば、下げ止まりは見えてくるかもしれません。
エルドアン大統領の暗殺未遂事件が発生
トルコ国民の中でも、エルドアン大統領への不満は溜まっているようで、ついにエルドアン大統領の暗殺未遂事件が発生しました。
12月4日、エルドアン大統領の護衛警官の車に爆弾が仕掛けられており、なんとかトルコ当局が未遂で終わらせたようですが大統領暗殺事件として世間を揺るがせております。
エルドアン大統領に不満を持つ国民が優勢派なのであれば、この事件を現トルコ政権を変える良いきっかけとしてつなげてほしいところです。間違っても、エルドアン大統領に利用されて、この事件を面倒な野党側をまとめて粛清させる理由に使われないように祈っています。。。
今後の見通し
はい、そんなわけで、現状、あらゆる面からトルコの上昇理由が見当たりません。(前回も言ったなこれ。。。)
結局、鍵になるのは利上げができるかどうか。
次回の政策会合は12月16日です。
市場では利下げの予想がされていますが、ここで利上げの判断がされない限り、このまま下落を続けて、続々と最安値を更新していくことになるでしょう。
次のトルコリラ円の節目は7.5円(トルコリラドルで言う15ドルの節目ライン)が予想されます。
以上、よろしくお願いいたします。